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【GEAR'S VOICE Vol.21】ノンバーバルパフォーマンス「ギア-GEAR-」マイム俳優・岡村渉インタビュー@『ラジオカフェ』

 

京都の街で絶賛公演中のノンバーバルパフォーマンス「ギア-GEAR-」の連載コラム第21回目(毎週木曜日更新)。今回も制作スタッフの大名(だいみょう)が、「ギア」マイム俳優・岡村渉さんにインタビュー。

 

「こんにちは、観光客の方々で賑わう秋の京都も、先日の3連休を過ぎ、徐々に冬のよそおいが濃くなってまいりました。みなさま、いかがお過ごしでしょうか? 今回は『ギア-GEAR-』に出演中のマイム俳優・岡村渉さんに、公演会場である1928ビル1階の『ラジオカフェ』さんにてお話を伺いました」

 

大名:本日は『ラジオカフェ』さんにお邪魔しています。選ばれたきっかけは?

 

岡村:今回初めてお伺いするのですが、ギアの会場と同じビルにあるカフェなので以前から来てみたいと思っていました。おしゃれな店内ですし、お料理もヘルシーでボリューム満点ですね。男性の方も満足できるのではないでしょうか。

 

大名:現在マイム俳優として活躍中の岡村さんですが、いつ頃から活動されているのでしょうか?

 

岡村:実は、マイムを初めてからの期間はそれほど長くなくて、今でだいたい5年目くらいなんです。

 

大名:そうだったんですね。それまではどのような人生を歩んでこられたのですか?

 

岡村:小さい頃は大のサッカー少年で、暇さえあればずっとボールを蹴っていたように思います。中学に入ってからはバンド活動をはじめ、ドラムを担当していました。高校に入ってもその熱は冷めず、本気でプロのドラマーを目指すほど夢中で取り組んでいたんですよ。

 

大名:大学では芸術を学ばれていたそうですが、そのきっかけは何だったのですか?

 

岡村:プロのドラマーになるためには、大学に行ったり別の仕事をしたりしながら少しずつ仕事を獲得していくのが通例だそうで、とりあえず大学に進学するようにドラムスクールの先生に言われたんです。ただ、高校時代はずっとバンド活動に明け暮れていたので、全然勉強はしていなかったんです(笑)。それで、小さい頃から得意だった絵画でなら進学できるんじゃないかと、芸術の大学を受験しました。父親が絵画と彫刻の先生なので、幸い、絵を描く環境は整っていたんです。実際、小学校くらいの頃から油絵なんかも描いていましたし。そして、今度は絵を描くことにどんどん夢中になっていったんです。何にしても、どっぷり浸かるタイプなんでしょうね。それからは、画家を目指すようになりました。デザイナーではなく、あくまでも画家。表現者になりたかったんです。ドラムにしても絵画にしても、常に自分自身を表現できる場所や方法を探していたんだと思います。

 

大名:マイムとの出会いの前に、たくさんのものとの出会いがあったんですね。

 

岡村:そうなんです。そして、ようやくマイムとの出会いがやって来ます(笑)。絵画の勉強をする中で、イタリアのフィレンツェに2か月ほど滞在する機会がありました。滞在していたところの近くには広場があって、よく散歩をしていたのですが、そこに大道芸人がいたんです。彼は、パントマイムの技術を使いながら通行人に色んないたずらをしていました。通行している車を止めてわざわざ車の前を歩行者に歩かせたり、通行人のかぶっているハットを拝借して勝手にパフォーマンスを始めたり、それこそ日本では絶対にできないようなことを平気でするんですよ(笑)。それがすごく衝撃的で、面白くて、いつも見に行っていました。そして、何なら自分もやってみたい、という気持ちが沸々と沸き上がってきたんです。

 

大名:ただ見て楽しむだけでなく、自分もやってみたい、というところまでいくのがすごいですね。それでマイムを始められた、と?

 

岡村:実はもう一つ大きなきっかけがあって、フィレンツェでの路上パフォーマンスを見た後にニューヨークで観た「ブルーマン」というノンバーバルパフォーマンスがこれまた衝撃的で、フィレンツェの彼とまさに同じようなことをしていたんです。それで、やっぱりこれだ!と。帰国してからすぐにマイム俳優のいいむろなおきさん(現在もギア出演中)に師事するようになりました。

 

大名:ギアとはどのようにして出会われたのですか?

 

岡村:いいむろさんの出演する舞台ということで、2010年の初演を観に行ったんです。観てすぐに「これに出たい!」と思いました。ギアには5つの異なるパートがあって、それぞれがそれぞれの役割を果たし、一つの物語を創りあげています。これは、それぞれが異なる楽器を使って一つの音楽を奏でるバンドとすごく似ているなと思ったんです。みんなでドラムを叩くのとは違う楽しさがそこにはあり、自分にこの舞台は向いている! と直感的に感じました。それで、「予定を全て空けて稽古に出るので参加させてください」と直談判し、メンバーに入れていただくことになりました。

 

大名:マイムという表現について、思うところを教えてください。

 

岡村:カバンが空中で止まっているように見せたり、壁のないところに壁があるように見せたりするのが代表的なマイムのパフォーマンスですが、僕は別にそれ自体は(悪い表現をすれば)さして重要なことではないと思っています。それは、そのパフォーマンスをないがしろにしているということでは決してなくて、あくまでも表現の土台であるということです。中途半端なパフォーマンスをしてしまうと、観客は幻滅するでしょう。でも、逆にパフォーマンスの技術が高ければ、前のめりになって観てくれます。技術の洗練によって、その前のめりの姿勢に誘導したいだけなんです。カバンが止まっているように見えることを伝えたいわけではなくて、それらのパフォーマンスを介して、自分の表現する世界を伝えたいんです。そして単純におもしろいと言ってもらいたいんです。少しでも多くの人に愛されたいという自己実現の欲求なのでしょう。これは、バンドや絵画に没頭していた頃から何も変わっていないですね。その表現手段が今の自分にとってマイムだということです。

 

大名:マイム俳優・岡村渉の今後の目標は?

 

岡村:もっともっと色んな経験を積んでいきたいです。色んな場所でのパフォーマンスにチャレンジしていきたいし、マイムを軸とした様々な身体表現にチャレンジしたいと思っています。

 

大名:最後に、座右の銘があれば教えてください。

 

岡村:「やりたいことをする!そのために、やらなければいけないことをする!」ですね。

 

大名:まさに今回のお話を凝縮した言葉ですね。今日はありがとうございました。

 

 

2012年11月「GEAR'S VOICE Vol.21 PART1&PART2」

[PART1]http://news.walkerplus.com/article/35046/ 

[PART2]http://news.walkerplus.com/article/35047/ 

立命館大学広告研究会発行誌 CHECH NOW vol.30 テーマ『三十路』

私たちにとっては「マイム」ってなじみのない言葉ですが、そもそも「マイム」とはなんでしょうか?

よく一般的に知られているパントマイムは、マイムという大きなカテゴリーの中の一つなんです。パントマイムのテクニックの一つとして大道芸などでよく使われる壁やロープを実際にはないがあるようにみせるものがありますが、それだけが「マイム」ではありません。壁やロープなどの「物」をみせる他に、「人物」をみせるマイムがあったり、複数の人で作るマイムがあったりします。

 

マイムを始めたきっかけは何ですか?

マイムというものを知るまではずっと絵を描いていて、大学も美術を専攻していたんです。一度絵の勉強でイタリアに行く機会があり、そこで大道芸のパントマイムをみて面白いと思ったのが大きなきっかけでした。そのときは絵を描いていたのでただ面白いで終わったんですが、その後、ニューヨークに行って「ブルーマン」をみて、やっぱり僕はパフォーマンスが好きなんだなということに気づき、日本に帰ってからパントマイム教室に通うようになりました。そこで今の師匠であるいいむろなおき氏に出会い、いろいろと指導していただき今に至ります。

 

舞台に立つときの心構えを教えてください。

僕が一番大事にしているのは、お客さんに楽しんでもらいたいという気持ちです。ただ、舞台に立つ前には本当にお客さんに楽しんでもらえるのかという不安もあります。でも、その不安な気持ちのまま舞台に立ってしまうとお客さんにも伝わってしまうので、「大丈夫、きっと喜んでもらえる」と信じ、そして自分に自信を持って舞台に立とうと心掛けています。

 

もしこの職業に就いていなかったら、何をやっていたと思われますか?

もし絵を続けていたら画家になっていたかもしれませんが、僕はあまり「この職業に就きたい」というのがなく、本当に自分がやりたいことは何かという事でずっと悩んできて、それで今の仕事に出会ったので...もしかしたらサラリーマンになっていたかもしれないです。

 

大学生の時にあこがれていた三十路像はどんなものですか?

ルパン三世になりたかったです(笑)。物を盗むことはよくないことだと思いますが、ルパンのように次はこの仕事をしようとか、次はこのプロジェクトに参加しようとか、そうやって自分の興味のあることにどんどん飛び込んでいける人になりたいなと思っていて、僕だったらどの仕事でそれができるかなと考えてました。

 

理想の三十路になるために大学生のうちにしておくべきことは何だと思われますか?

自分が思い描いている理想に近づくために何が必要か、ということを考えることだと思います。僕は、将来個人で活動していきたいと思っていたので、人と直接関わらないと仕事にならないということが今後あるだろうなと思い、たくさん本を読んだり、喋ったことのない人と喋ってみたりなどコミュニケーション能力を高めようと心掛けていた時期がありました。今思うとすごくやってきてよかったなと思います。

 

三十路を迎えるにあたって、二十代を振り返ってどう思われますか?

素晴らしい二十代でした。すべてやってきたことが今に活きてるな、無駄じゃなかったなと思います。僕の場合はマイムというものをやるまでは知りもしなかったんですが、それまでに絵を描いたり、スポーツをしたり、音楽をしたりしてきて、それらはすべてマイムにつながっていると思います。特に二十代でしてきた経験はマイムに活かされているなと感じます。また、これからも良い時間を過ごしたなと思えるような人生にしていきたいですね。

 

「ギア-GEAR-」の魅力を教えてください。

一番の魅力は、いろんなジャンルの人が集まって一つの事を表現している所だと思います。違う分野ーバトントワリングであったり、ブレイクダンス、マジック、俳優さんとかーは普段は同じ舞台にあがることはありません。そういう今までに一つの舞台に集まることがなかった人たちが集まって稽古をして、その過程でいろんなアイデアが生まれ、それがお客さんにも魅力として伝わるんじゃないかと思いますし、「ギア」でしかそれは体験できないと思います。

 

最後に、大学生に一言お願いします。

したいことができるポジションだと思うんで、どんどんいろんな事にチャレンジして欲しいです。社会には出てなくて、学生からも少し離れつつある、狭間の時期だと思いますが、大学生は自由だということを強く言いたいです。「大学」に囚われないで欲しいです。